英文名 | Cell Biology(lab.) | |
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科目概要 | 1年前期[20コマ]、2群科目、必修、講義 | |
科目責任者 | 佐藤 俊哉 | |
担当者 | 佐藤 俊哉※, 板倉 誠※, 高橋 倫子※, 萬代 研二※, 梅澤 明弘※, 末永 忠広※, 堺 隆一※, 高山 吉永 | |
教室 | M101(新校舎1階大講義室) |
臨床経験を踏まえ、細胞生物学を学ぶこと(端的には新しく開拓された細胞生物学的知見・技術)がどのような形で医療の役に立つかを解説する。
1. プロフェッショナリズムと倫理: | 4. 知的探究と自律的学習: ◯ | 7. 予防医学: ◯ |
2. コミュニケーション能力: | 5. チーム医療: | 8. 地域医療: |
3. 医学的知識と技術: ◎ | 6. 医療の質と安全: | 9. 国際貢献: |
細胞生物学では、後期から始まる人体の生理機能を扱う専門科目の基盤となるように、近年の分子生物学・構造生物学を取り入れ、また疾患のメカニズムと関連付けながら細胞の構造・機能についての知識を習得する。
細胞とは何か、「生きている」とはどういうことか、という基本的な問いから始め、医学部第1学年で細胞生物学を学ぶ意義について共に考える。生物の基本単位である細胞について、各講義で細胞と細胞内小器官の基本構造・機能、化学的組成・生体高分子、膜の構造・流動モザイクモデル、についてそれぞれ詳しく学んでゆく。細胞の構造や構成分子を理解した後は、細胞膜を介する物質の輸送過程、それによって生じる細胞内液と外液間での分子やイオン組成の違いによって生じる浸透圧や膜電位の形成機構を講義する。特に膜電位についてはNernst の式から静止膜電位が計算出来ることを学ぶ。細胞は細胞骨格によってその形状を保持し、変化させていること、また細胞骨格系タンパク質により細胞運動・細胞内小胞輸送などのダイナミックな細胞機能を実現していることを学ぶ。さらには、様々な細胞と細胞社会を形成し、組織・臓器・個体と高次の集合体を形作っていることを学ぶ(ここまでが中間試験の範囲である)。後半からは、遺伝子の構造と機能、DNA複製、ゲノム、エクソン・イントロン、セントラルドクマ、RNA、転写・翻訳、スプライシング、転写調節など分子遺伝学の基礎を学ぶ。さらにタンパク合成とその細胞内輸送によるソーティング、細胞膜を介する分泌と吸収、細胞間、細胞内情報伝達の一般原理、シグナル分子を介した細胞のコミュニケーションについて理解する。細胞の分化過程、リプログラミング、山中4因子によるiPS 細胞の作製、iPS 細胞・胚性幹細胞による再生医療、再生医療の諸問題など、近年ノーベル賞の対象となった細胞生物学のトピックスを成育医療研究センター研究所再生医療研究センター長梅澤明弘博士にご講義頂く。最後に個体細胞の増殖の細胞周期・細胞死による個体サイズ・形態形成制御、さらには増殖制御機構からの逸脱としてのがんについて学び、以降の科目の基礎知識とする(中間試験以降が定期試験の範囲である)。
教科書に沿って,スライドを用いて講義を行う。スライド内容はプリントとして主要部分を配布する。また授業中に練習問題を提示し、授業の中で解答を検討する。
回 | 日時 | 講義テーマ | 講義内容 | 担当者 | 所属 |
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1 | 4/14(月)③ | イントロダクション:細胞とは | 生命単位としての細胞、生命現象の階層性、「生きている」とは、細胞の観察法 | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
2 | 4/15(火)① | 細胞内小器官⑴ | 細胞内にある様々な装置について、その形態や機能について学ぶ:核、ミトコンドリア | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
3 | 4/21(月)③ | 細胞内小器官⑵ | 細胞内にある様々な装置について、その形態や機能について学ぶ:小胞体、ゴルジ体、、リソソーム、ペルオキシソーム | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
4 | 4/22(火)① | 細胞の化学組成 | 細胞を構成する分子の化学;主要構成元素、生体分子の特徴、生体高分子 | 板倉 誠 | 生化学(堺単位) |
5 | 4/28(月)③ | 生体膜の構造と機能 | 生体膜の構造、流動モザイクモデル、膜を横切る輸送、細胞内外のイオン組成 | 高橋 倫子 | 生理学(高橋単位) |
6 | 5/12(月)③ | 浸透と膜電位 | 浸透現象、浸透圧と細胞容量、イオンチャネル、膜電位の形成機構、Nernst の式 | 高橋 倫子 | 生理学(高橋単位) |
7 | 5/13(火)① | 細胞骨格・運動⑴ | 細胞骨格をつくる中間径フィラメントと微小管の特性、モータータンパク質、鞭毛・繊毛運動の仕組み・異常 | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
8 | 5/19(月)③ | 細胞骨格・運動⑵ | 細胞骨格をつくるアクチンフィラメントの特性、細胞の移動に関わる分子機構、筋収縮のメカニズム | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
9 | 5/20(火)① | 細胞の社会 | 細胞同士の接触・接着に関わる分子と機能、細胞を単位として見た個体 | 萬代 研二 | 生化学(萬代単位) |
10 | 5/27(火)① | 細胞内・外輸送 前期のまとめ | 細胞内区画とタンパク質の輸送、前期に学んだ項目の復習 | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
11 | 6/3(火)① | 中間試験 | 講義前半部分について | 佐藤 俊哉 | 実験動物学 |
12 | 6/10(火)① | 核と遺伝情報⑴ | 遺伝子の構造と機能、DNA 複製、セントラルドクマ、エキソン・イントロン、ゲノム、分子遺伝学 | 高山 吉永 | 分子遺伝学 |
13 | 6/17(火)① | 核と遺伝情報⑵ | RNA 分子の種類と機能、転写のメカニズム、転写調節・転写因子、選択的スプライシング | 高山 吉永 | 分子遺伝学 |
14 | 6/23(月)③ | タンパク合成と細胞内輸送 | 翻訳機構、タンパク質の生合成、細胞内輸送に関わる分子と機能、細胞内輸送と細胞機能 | 板倉 誠 | 生化学(堺単位) |
15 | 6/24(火)① | 細胞の分泌と吸収 | 分泌に関わる分子複合体・調節機構、膜融合、被覆小胞、細胞内取り込みの諸機構 | 板倉 誠 | 生化学(堺単位) |
16 | 6/30(月)③ | 細胞における情報伝達⑴ | 細胞間、細胞内情報伝達の原理、シグナル分子、受容体、セカンドメッセンジャー、アダプター | 板倉 誠 | 生化学(堺単位) |
17 | 7/1(火)① | 細胞における情報伝達⑵ | 受容体型・非受容体型キナーゼ、G 蛋白、G 蛋白共役受容体、転写因子と遺伝子発現 | 板倉 誠 | 生化学(堺単位) |
18 | 7/7(月)③ | 細胞分化と細生医療の基礎 | 受精、発生と分化、細胞分化と遺伝子発現、生殖医療のあゆみ:胚性幹細胞、iPS 細胞、組織幹細胞、再生医療と対象疾患、再生医療に関わる諸問題 | 梅澤 明弘 | 非常勤教員 |
19 | 7/8(火)① | 細胞増殖・分裂 | 細胞周期、サイクリン、チェックポイント、細胞死、アポトーシスとネクローシス | 末永 忠広 | 免疫学 |
20 | 7/14(月)③ | がん | がんとは、がんの浸潤と転移、がんの悪性度、がん治療の細胞生物学的基盤 | 堺 隆一 | 生化学(堺単位) |
予習:この講義は高校レベルの生物学の基礎知識を持っていることを前提として進める。講義の前に該当箇所をざっと読み、専門用語を見ておくと理解の助けとなる。
復習:スライドのハンドアウトと授業中に書いたメモを自分の学習ノートとしてまとめる。さらに理解不足と考えられるところを指定教科書あるいは参考書の該当部分を読んでその日の講義の内容を理解すれば完璧である。
予・復習を合せて2時間が必要となる。
並行して行われる生物学・生物学実験が最も良い予習あるいは復習となると考えられる。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | Essential 細胞生物学 原書第5版 | B. Alberts 他著(中村桂子・松原謙一・榊 佳之・水島 昇 監訳) | 南江堂 |
参考書 | 細胞の分子生物学 原書第6版 | B. Alberts 他著(中村桂子・松原謙一 監訳) | ニュートンプレス |
参考書 | 理系総合のための生命科学 第5版 | 東京大学生命科学教科書編集委員会編 | 羊土社 |
参考書 | 基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第4版 | 和田 勝 | 羊土社 |
参考書 | 新・細胞を読む | 山科正平 | 講談社(ブルーバックス) |
参考書 | 三訂版フォトサイエンス生物図録 | 鈴木 孝仁 監修 | 数研出版(学校採用専用書籍) |
『Essential細胞生物学』第5版では出版社がGarland PressからW. W. Norton社となり、南江堂のサポートからhttps://digital.wwnorton.com/ebc5 を経由(登録)し、Studentaccess で動画視聴が出来るようである。また、web上に多くの優れた画像・教材が存在しており、これらは理解を非常に助けてくれる。
1.「生きているということ」、細胞の研究手法—特に顕微鏡の発達と応用、またモデル生物の説明ができる
2.細胞の基本的構造・細胞内小器官について図示しながら説明できる
3.細胞を構成する元素・有機化合物とその代謝について説明できる
4.細胞膜が隔てる内と外のイオン環境とそれを生成・維持する細胞膜分子の構造・機能について説明できる
5.細胞骨格・運動、多細胞による組織構築の仕組みを説明できる
6.細胞内・外の小胞を介した物質輸送と細胞機能の関連、オートファジーについて説明できる
7.細胞増殖に伴うゲノムの複製・セントラルドグマについて説明できる
8.細胞の各種受容体とその下流で機能する様々なシグナル伝達系についてその概略を説明できる
9.細胞増殖・細胞死の制御機構とそれらからの逸脱としての癌について説明できる
10.再生医学の基礎としての細胞分化・分化制御技術の人為的制御について説明できる
11.がんの「がん」としての性質を遺伝子や細胞生物学から説明できる
中間試験(50%)、定期試験(45%)、授業態度(5%)により評価する。なお中間試験は学習環境・習慣づくりの評価にもなるため、中間試験で一定の基準を下回った場合は、定期試験の受験資格として以下の課題をクリアすることが必要となる。
1)後日指定される講義テーマについて、学生が講師役となり対面で講義を行う。
2)教員および学生からの質問を受け、適切に答える。
各試験の出題範囲は、中間(第1〜10回)、定期(第12〜20回)、追・再試験(第1〜20回)となる。
医学の基礎知識となるため、教科書の通読を推奨する。